My Funny Footnote

映画のことをノートしていきます。

ジョナ・ヒル監督『Mid90s ミッドナインティーズ』(2018)

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カミング・オブ・エイジもので、いざというときに真面目なことをちゃんと言える友人、正しい行動を取れる友人にずっと憧れがある。

一番最初の記憶では、『スタンド・バイ・ミー』のリヴァー・フェニックス。最近だと、エリザ・ヒットマン監督『17歳の瞳に映る世界』にもそんな友人がいた。

この映画ではレイがそうだ。彼は主人公スティーヴに、自分と友人たちの境遇を語る。憧れの人物たちの現実。崩壊しつつあるアドレセンス。レイは「ファックシット」との友情をあきらめつつある。だから後味は苦い。

未知の世界に飛び込んだ少年の期待と不安、90年代の輝きというのも魅力的だけど。最近のアメリカのカミング・オブ・エイジ・ムーヴィーには、大人になりつつあるからこそ、もう輝かしい未来が存在しないことが分かってしまうという、そこはかとない閉塞感を感じることがある。

 

最後の場面。フォース・グレイドがいつもカメラを回しているという設定を活かす。その映像が天才的だった。魚眼レンズの映像。一人称の視点と、躍動する世界。映像に限っては、パーフェクトな黄金時代。フォース・グレイドは、自分の映画の構想を、Super Baby, Stong Babyと言っていた。意味不明で笑えるが、それを実現してしまったのかもしれない。

でもやっぱりこの映像は、プロが作ったウェルメイドさを持っている。なんでこんな巧みに編集させたのだろう。なんで数分しかないんだろう。彼らの黄金時代の短さなのだろうか。やっぱり後味は苦い。


二つの印象的な場所がある。

狭く長い廊下。冒頭の兄とのケンカ。二人の関係がやがて変わって、この廊下は別の意味を持つだろうことを予感させる。

もう一つは道路の中央分離帯。果てからスケボーでやってくる。行き交う車の間を。自由さと危うさ。スティーブは最初、夢中で喜びと恐怖でぐちゃぐちゃになりながら追っていく。次はレイと二人で。新しい関係が芽生えている。

あと音楽について。2000年代のアメリカのインディーズは青春の音楽だったけど、90年代のはあまり聞かなかったんだな。90年代の音楽はリアルタイムではないけどストーン・ローゼズとかオアシスとかを聞いてた。